The rain in Spain stays mainly in the plain

 手元にありながら、久し振りに”My Fair Lady”のDVDを観ました。

 ”My Fair Lady”は、ロンドンの下町で労働者階級で話されるCockneyという下町英語を話す花売り娘イライザをAudrey Hepburnが演じた1964年のアメリカのミュージカル映画です。

 言語学が専門のヒギンズ教授が、Audrey Hepburn扮する花売り娘イライザをレディに仕立て上げるように連日連夜特訓をするのですが、生まれ育った下町英語Cockneyしかわからないイライザは、自分が訛っていることすら自覚がなく、発声・発音からの特訓が続きます。

 教師が期待をかけると、学習者の成績が向上する傾向が見られるという教育心理学における心理的行動の1つであるピグマリオン効果が、この映画・My Fair Ladyで花売り娘を社交界で通用するレディに仕立て上げるという「期待が現実を作る」というピグマリオン効果を象徴する作品で、ヒギンズの「レディにする」という強い期待と徹底的なコーチングによって、イライザは自信と教養を身につけ、実際に高いレベルのレディへと成長するのが前半のストーリです。

 ピグマリオン効果のターニングポイントとなるのが、”The Rain in Spain”という挿入歌のフレーズ、”The rain in Spain stays mainly in the plain”(スペインの雨は主に平野に降る)です。Queen’s Englishで[eɪ](エイ)と発音する二重母音が5つ含まれているのですが、下町英語Cockney下町では[æɪ]または[aɪ](アイ)と発音するので、[イライザはなかなか言われた通り発音することができなかったのが、”The Rain in Spain”の発音の習得が出来たことが転機となり、また頭文字のHを発音できなかったことには”In Hertford, Hereford, and Hampshire, hurricanes hardly ever happen”(ハートフォードやハンプシャーではハリケーンは吹かない)などのフレーズの発音の習得でレディへの道を歩み始めます。

 実際に人前で成果を披露するために紳士淑女の社交場である競馬場にイライザを連れ出しますが、美しく着飾ってもレディとしての素養までは身につけていないイライザはレディを演じることが出来ませんでした。

 さらに特訓が続いて、6週間後に舞踏会に出たイライザは、上流階級の人々の前でレディとして振舞うことが出来た、というストーリです。

 映画では、レディに仕立て上げるように連日連夜特訓をする中で、”My Fair Lady”の代表的な挿入歌”I Could Have Danced All Night”で特訓後の即興ダンスで歌われたり、また舞踏会での大成功後に、この映画のメインとなるようなストーリーが続いたりと、久し振りに”My Fair Lady”を楽しみました。

 ピグマリオン効果は、教師期待効果とも言われて、これを参考に授業を組み立てようとしました。私の教育心理学での研究テーマである「センス」に関して、「生徒のセンス」に併せて「教師のセンス」に関しても、考えさせられる作品です。また根強く残る階級という意識が「見た目」ではなくて「ことば」である点でも興味深い作品です。

itsumi
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