自然

 私は、今回の震災によって、普段なら得られなかった貴重な体験をしたのは事実です。でも、失ったものがあまりに多いのです。取り返しのつかないチャンスも逸しました。やはり、あの地震は、絶対になかった方がいいです。そして、これからも絶対に、あんな地震はあってほしくないです。いくら貴重な体験ができたとしても・・。

 私は、地震の起こった意味を求めようとは、今はしていません。ただ、ありのままに、多くのいのちを失った、街を破壊し尽くしたものとしての一つの<事実>として、受け止めたいと思っています。
 これも自然だと、そして、自然の前に、私という人間は、何もなすすべがないと。

 私は自然の前では、ただただ受け身です。そして、大きな歴史の流れの中で、その流れに身を委ねるだけです。そこに意味を求めようとしても、ただ<事実>があるだけです。自分の納得できる意味をそこにつけようとするのは、結局は自分の中の<エゴ>ではないでしょうか?

 自然のなすひとつひとつの出来事に、意味を見出し、教訓とする心は美しいことだと思います。でも、同時に自然のなすひとつひとつの出来事を、ありのままに受け止めることも大切なことだと思います。
 April 17,1995

itsumi
震災