上を向いて歩こう

 今日、避難所となっていますわたしの職場で、ちょっとした会がありました。震災から半年、(震災直後何もしなかったに等しい)行政の避難所解消の方針によって、とりあえずひとりひとりの住民の方々が7月末にはそれぞれの場所に移る(戻るのでは決してない!!)ことになり、お別れ会を持ったのでした。300人(震災直後は千有余人)余りからはじまって、半年で30人、寂しい会でした。

 2月、3月の一番つらかった頃には、お楽しみ会のようなものを週末に催し、笑い、喜びあいました。みんな辛かったから、みんな苦しかったから、みんな寒かったから、そして希望なんかなかったから、だから笑い、喜びました。心から笑い、喜びました。心の底の苦しみ、苦さを追い出すために、記憶にこびり付いて離れない光景や、耳から消えない叫び声や泣き声からひとときでも逃げたいから。みんな、それぞれに、なにかを求めていました。

 水が貴重だった、食料が貴重だった、暖がほしかった、温かいものを食べたいと思った、余震の恐怖におびえてた、ご遺体のために線香がほしかった、そして心のやすらぎがほしかった。

 いろんなことが思い出されました。苦しかったから、辛かったから笑いました、冗談を飛ばしました。でも今は落ちつき、避難所も解消されようとしています。ようやく先が見えた、過去におびえるのではなく明日のことに心砕けるようになったので、みんな今は安心して涙を流せます。泣いた後は笑えるから。

 最後に「上を向いて歩こう」をみんなで歌いました。涙をこぼしました。安心して涙をこぼして泣けるようになりました。やったね!

 おわりではなく はじまりです。
 July15,1995

itsumi
震災